「うちの子、机に向かうとすぐ集中が切れちゃう」
「ドリルをやらせているけれど、本当に身についているのかな」
小1・小2の保護者から、こうした声をよく聞きます。
家庭学習というと、ドリル、漢字、計算。机に向かう勉強を思い浮かべることが多いと思います。それも大切です。
でも、低学年でもう一つ大切にしたいのは、実際に見て、触って、数えて、比べることです。
スーパーで買い物をする。料理をする。公園を歩く。何気ない日常の中にも、算数や理科の材料はたくさんあります。
今回は、週末の生活を授業にせず、学びの種だけ拾う方法を紹介します。
低学年は、実物があると考えやすい
7〜11歳頃は、ピアジェのいう「具体的操作期」と説明されることがあります。ただ、現在は「この年齢だから必ずこの段階」と単純には考えません。課題の内容や経験によって、理解の仕方は変わります。
それでも低学年では、数字だけを見るより、並べる、量る、分ける、比べるといった具体的な経験が、理解を助けることは多くあります。算数でも、具体物や図は抽象的な考えの助けになります。
ただし、物を触れば自動的にわかるわけではありません。
大切なのは、
「どっちが多い?」
「どうしてそう思った?」
「半分にしたらどうなる?」
と、体験と言葉をつなぐことです。
家庭の日常にも算数はある
家庭での数学的な活動と子どもの数学力には、全体として小さいながら正の関連が報告されています。保護者と子どもが家庭などで行う数学活動を促す介入のメタ分析でも、プラスの効果は確認されています。
だからといって、「今日から家でも算数を教えなきゃ」と考える必要はありません。
おすすめは、生活の中にある数や量を、少し言葉にしてみることです。効果は大きくないこともあり、家庭で教えれば成績が上がる、という話ではありません。
1|スーパーは、数える・比べる場になる
「あと何個?」で数を使う
「みかんを6個入れてね」のあとに、「10個にしたいんだけど、あと何個いる?」と聞いてみる。
これは 6+□=10 です。でもドリルとは違います。実物を持って数え、「4個ってこれくらい」という量の感覚も一緒に経験できます。
値段を比べてみる
小1なら「198円と298円、どっちが高い?」くらいから。小2なら「こっちは300円くらい、こっちは200円くらい。どれくらい違うかな?」でもいい。
買い物には、数える、比べる、足す、引くが自然に出てきます。全部を計算問題にしなくて大丈夫です。1回だけ聞けば足ります。
重さも触ってみる
「このキャベツと、このりんご、どっちが重そう?」と持って比べる。数字を見る前に、重い・軽いを体で感じる。それも量の学習です。
2|料理には、単位と「分ける」がある

計量カップを使ってみる
「水を200mL入れてくれる?」とお願いする。目盛りを見る。少しずつ入れる。200のところで止める。
mLは教科書だけで見るとわかりにくい単位です。「このカップいっぱいで200mL」という経験があると、数字と実物がつながります。
半分を実際につくる
パンケーキを半分にする。りんごを4人で分ける。ピザを4等分する。
これは、半分、4つに分ける、同じ大きさにする、という分数の土台になります。「これは2分の1です」と教える前に、「半分にしてみよう」で十分です。
大さじ1と小さじ3を比べる
「大さじ1杯って、小さじ何杯分だろう?」と、水を入れて比べてみる。正解を先に教えなくても、「試してみよう」でいい。
3|キッチンは、変化を見る場になる

料理では、温める、冷やす、混ぜる、溶かす、膨らむ、色が変わる、が毎日起きます。
ホットケーキが膨らんだら、「なんでだろうね」。卵を焼いたら、「生のときと何が変わった?」。氷を入れたら、「どこから溶けていくかな?」。
見たことを比べることが、理科の入り口になります。
浮く・沈むも、予想してから試す
野菜や果物を水に入れて、「浮くと思う?沈むと思う?」と予想してから試すのも面白いです。
ただし、「土の中で育つ野菜は沈む」「土の上で育つ野菜は浮く」という単純な決まりがあるわけではありません。浮くか沈むかは、その物の密度と水の密度の関係で決まります。じゃがいもは真水では沈みますが、塩を加えて水の密度を上げると浮くことがあります。
だからこそ、「じゃがいもは沈んだ。りんごは浮いた。なんで?」が出ます。そこからが理科です。
「なぜ?」が出たら、すぐ答えを言わず、一度だけ予想を返す方法は、逆質問の記事にまとめています。
親は授業にしなくていい

スーパーで「はい、これは算数です」、料理中に「今から理科です」と言う必要はありません。それでは、また勉強になります。
一言だけ問いを置く。
「どっちが多いかな?」
「半分ってどれくらい?」
「どっちが重い?」
「これ、浮くと思う?」
「なんで膨らんだんだろう?」
これだけです。
平日の夕方は忙しい。学校、宿題、お風呂、夕食で終わる日もあります。だから週末。買い物、料理、公園。少しだけ立ち止まって、「これ何だろう?」を拾ってみる。
秋なら、どんぐりを比べる。落ち葉の形を見比べる。種を探す。同じ公園でも、探すものを一つ決めるだけで景色が変わります。
民間学童「こどもクリエ塾」でも、教室の外の体験を、数や変化の話につなげることはよくあります。通っているご家庭にとっては、その積み重ね自体がすでに学びです。
日本の小学校の探究学習をまとめた研究でも、問いをつくることに加え、手を動かす体験、振り返り、対話が重要な要素として挙げられています。
HAKOLAB(はこラボ)でも、まず「やってみる」
HAKOLAB(はこラボ)でも、理科を知識から始めることはあまりしません。
見る。触る。動かす。試してみる。そのあとに「なんで?」を考えます。
動画を見るだけではありません。キットを使って自分の手で試す。予想と違ったら、「なんでだろう?」と考える。
探究型の科学学習についての近年のレビューでも、体験的な探究は、概念理解や興味にプラスの可能性が示されています。一方で、ただ自由にやらせるだけではなく、大人の適切な支援も重要だと指摘されています。
こどもクリエ塾で続けてきた「やってから考える」を、通えないご家庭の放課後にも届ける選択肢です。教室の代わりではありません。
自宅の放課後に取り入れたい方は、こちらからご覧ください。
HAKOLABをはじめる(https://hakolab.kids/start/)
机に向かわなかった週末も、学んでいる
週末にドリルが1ページも進まなかった。それだけで「今日は勉強しなかった」と考えなくてもいいと思います。
スーパーで10まで数えた。料理で200mLを量った。りんごを半分にした。じゃがいもが沈むのを見た。落ち葉の形の違いに気づいた。
それも全部、算数や理科につながる経験です。
低学年のうちは、机の上の勉強と生活の中の学びを、あまり分けすぎなくてもいい。親が先生にならなくても、「これ、面白いね」と一緒に気づくことから始められます。
この記事を書いた人
遠藤奈央子
株式会社ビジョンゲート代表取締役。2011年より民間学童「こどもクリエ塾」を運営し、16年間、子どもたちの放課後の学びと成長に携わる。一般社団法人民間学童保育協会代表理事。社会福祉士。
著書に『「自分でできる子」に育つ 放課後時間の過ごし方』(講談社)、『「民間学童」の作り方』(日本実業出版社)。
こどもクリエ塾では、生活の中の「数える・比べる・試す」も放課後の学びにしています。
HAKOLAB(はこラボ)では、自宅でも手を動かしてから考える体験をお届けしています。
参考文献・参考情報
- Nelson, G. et al. A Meta-Analysis and Quality Review of Mathematics Interventions Conducted in Informal Learning Environments with Caregivers and Children. Review of Educational Research.
- Daucourt, M. C. et al. The Home Math Environment and Math Achievement: A Meta-Analysis.
- Silver, A. M. et al. Assessing the association between parents’ math talk and children’s math performance: A preregistered meta-analysis. Journal of Experimental Child Psychology, 2024.
- Dah, N. M. et al. The impacts of open inquiry on students’ learning in science: A systematic literature review. Educational Research Review, 2024.
- de Jong, T. et al. Beyond inquiry or direct instruction: Pressing issues for designing impactful science learning opportunities. Educational Research Review, 2024.
※家庭での数学活動と学力には関連が報告されていますが、効果は大きいとは限らず、因果関係も単純ではありません。本記事では研究知見と、こどもクリエ塾での実践経験を分けて紹介しています。
