タブレット学習だけじゃ足りない?「ハンズオン学習」が小1・小2の学びを深める理由

  • 「タブレットで毎日学べているから、うちは十分かも」
  • 「画面の教材は分かりやすい。家で実験までしなくてもいいのでは?」

今の子どもたちは、タブレット学習で質の高い解説や問題に触れやすくなりました。反復できる、自分のペースで進める、間違えたところがすぐ分かる。これは大きな利点です。

ただ、科学を学ぶときには、画面で知るだけでなく、自分で触る、動かす、試す体験にも、別の役割があります。教育心理学や認知科学では、手を動かして学ぶ方法を「ハンズオン学習」と呼びます。

なぜ実際にやってみることが役立つのか。研究から言えることと、言えないことを分けて見ます。


目次

ハンズオン学習とは?

説明を聞く、画面を見るだけでなく、次のような身体を使った体験を含む学びです。

  • 物を動かす
  • 材料を混ぜる
  • 観察する
  • 結果を比べる
  • 自分で予想して試す

理科実験はその代表です。「水に入れるとどうなるか」を画面で見るだけと、自分で入れて「思っていたのと違う」と気づくのとでは、学び方が違います。自分で確かめることに、ハンズオン学習の意味があります。


エビデンス① 手を動かした経験は、その後の理解と結びつく

シカゴ大学などの研究チームは、物理の概念を学ぶとき、身体で現象を体験することがその後の理解にどう影響するかを調べました。角運動量やトルクについて、説明だけでなく力を身体で体験した学生のほうが、その後のテスト成績が高くなりました。

fMRIでは、実体験をした学生が後にその概念を考えるとき、感覚や運動に関わる脳領域も活動し、その強さは成績とも関連していました。身体で経験したことが、その後の「考える」プロセスにも関わる可能性を示しています。

注意点があります。この研究の主な対象は大学生です。「小1の脳も同じように変わる」とは言えません。 それでも、身体経験が理解の手がかりになる、という見方は、子どもの学習を考える材料になります。


エビデンス② 「予想と違った」が、学びの入口になる

実験の面白さは、いつも予想どおりにいくことではありません。「思ったより膨らまない」「色が違う」「うまくいかない」ときに、新しい疑問が生まれます。

認知科学では、予想と結果のずれを「予測誤差」と呼びます。このずれは、「どうして?」「もう一回やってみたい」という探索のきっかけになる、と考えられています。

タブレット学習は、正しい手順や結果を分かりやすく見せる強みがあります。自分でやると、量や混ぜ方が少し違い、思った結果にならないことがあります。その「予定どおりではないこと」が、探究の入口になることがあります。


エビデンス③ 小1前後では「質問すること」そのものが学びになる

2025年の研究では、5〜7歳の子ども103人を対象に、科学の個別レッスンで「質問すること」を促すグループと、「よく聞くこと」を促すグループを比べました。質問を促された子どもは、新しい科学情報への価値づけが高まり、とくに事前知識が少なかった子どもで、好奇心や学習面のメリットが大きく見られました。

小1・小2では、正解を早く教えるだけでなく、自分から聞く経験が重要だとする研究の一つです。実験では「どうなると思う?」「なんでこうなった?」「次はどうする?」が自然に出ます。画面上の正解を確認する学習とは、少し違います。


エビデンス④ 好奇心は、小学校低学年の科学的な考え方とも関係する

2026年の縦断研究では、平均年齢約6歳の子ども122人を追跡し、好奇心と科学的推論・科学知識の関係を調べました。小1前後では全体的な好奇心の高さが科学的推論と関連し、その後の学年では、知識を求めるタイプの好奇心が科学知識と関連していました。

「理科実験をすれば必ず好奇心が伸びる」という意味ではありません。「知りたい」「確かめたい」という気持ちと、科学的に考える力には関係がある、ということです。


「非認知能力」は、理科実験だけで直接育つわけではない

「非認知能力」「GRIT」「やり抜く力」はよく使われる言葉です。実験には、失敗してもう一度試す、順番を守る、結果を待つ、考えを言葉にする、他の人のやり方を見る、といった経験があります。自己調整、粘り強さ、対人スキルと重なる活動です。

小学生を対象にした研究でも、自己統制、GRIT、社会的スキルと科学学習成果の関連が報告されています。粘り強さは固定ではなく、教育的な働きかけで変わりうる、とする研究もあります。

ただし、「理科実験をすれば非認知能力が上がる」と因果まで言い切るのは適切ではありません。 実験そのものより、失敗したときの声かけ、自分で考える時間、もう一度試せる環境の方が重要です。

16年間、放課後の教室で子どもと実験や制作をしてきて感じるのも、同じです。内容が面白いだけでは足りません。失敗したあとに、子どもがもう一度手を出せる空気があるかどうか。そこに学びの差が出ます。


タブレット学習と実体験は「どちらか」ではない

タブレット学習が悪いわけではありません。自分のペースで進める、繰り返し確認できる、間違えたところがすぐ分かる、興味の入口になる。こうした利点は大きいです。教科の定着や学習習慣づくりでは、とくに強みが出ます。

ハンズオン学習には、自分で予想する、手を動かす、結果を直接見る、予想と違う結果に会う、もう一度試す、という特徴があります。

家庭では、「タブレットか実体験か」ではなく、「画面で知る+実際にやってみる」の組み合わせが取り入れやすい方法の一つです。


家庭でハンズオン学習を続けるのは、意外と難しい

「触ることが大切なのは分かった。やらせてみたい」。それでも、材料を探す、道具を準備する、手順を調べる、「どうして?」に答える、片付ける。平日の夕方に、これを毎回家庭だけで準備するのは簡単ではありません。

教育的に価値があることと、家庭で続けられることは、別の問題です。タブレット学習が続く理由の一つは、準備が少ないことです。ハンズオンはその逆が起きやすい、とも言えます。


はこラボは、家庭で「実際にやってみる」機会をつくる

HAKOLAB(はこラボ)は、「知る」と「やってみる」の間を、自宅でつなぐことを目指しています。理科実験の主な材料はキットで届きます。子どもが画面の教材だけを見て終わるのではなく、少人数ライブで先生と実験します。

先生は「どうなると思う?」「さっきと何が違う?」「もう一回やってみる?」と声をかけます。すぐに正解を教えることより、予想して、試して、気づく時間を大切にしています。分からないことは、音声のAI先生に質問することもできます。

最新研究をそのまま再現するサービス、という意味ではありません。研究からも重要とされる「手を動かす」「質問する」「試す」「考える」が、家庭の放課後で起きやすくなるようにすること。それがHAKOLAB(はこラボ)の役割です。


小1・小2の今、「好き」を画面の知識で終わらせない

昆虫や宇宙のコンテンツを見る。タブレットの問題を解く。それだけでも、学びのスタートです。その次に「自分でもやってみよう」があると、画面で知ったことが自分の経験になります。

うまくいくこともある。思った結果にならないこともある。そこでまた「どうして?」が生まれる。

低学年に必要なのは、知識の先取りだけではありません。「知りたい」から「やってみたい」へ。そのあと、また「もっと知りたい」へ。 その循環です。HAKOLAB(はこラボ)は、家庭の放課後に、その小さな循環を増やしたいと考えています。

サービス内容はこちら
https://hakolab.kids/


この記事で参照した研究(概要)

  • Kontra et al.(2015)Physical experience enhances science learning(主に大学生の物理学習。身体経験と理解・脳活動の関連)
  • シカゴ大学ニュース:Learning by doing helps students perform better in science
  • 5〜7歳を対象に、質問を促すことが科学情報への好奇心や学習に与える影響(2025)
  • 約6歳からの縦断研究。好奇心と科学的推論・科学知識の関係(2026)
  • 小学生の非認知スキルと科学学習成果の関連、GRITに関する教育介入研究(関連は示されるが、実験=非認知向上とは言えない)

この記事を書いた人

遠藤奈央子
株式会社ビジョンゲート代表取締役。2011年から民間学童「こどもクリエ塾」を運営し、放課後の理科実験・アート・学習支援に携わる。2026年9月、自宅完結型の放課後サービス「HAKOLAB(はこラボ)」を開始。講談社より『「自分でできる子」に育つ 放課後時間の過ごし方』を刊行。

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