「もう終わりだよ」と言っているのに、画面から目が離れない。
「あと5分だけ」
「この動画が終わったら」
「このゲームが終わるまで」
そう言っているうちに20分、30分。夕飯は遅れ、宿題もまだ。最後はタブレットを取り上げて、子どもが怒る。
小1・小2の放課後で、とてもよく聞く場面です。
小学校に入ると、宿題、明日の準備、お風呂、夕食、就寝が一度に増えます。その一方で、動画やゲームは子どもにとっていちばん楽しい時間です。毎日繰り返していると、「自制心がないのでは」と不安になることもあります。
民間学童「こどもクリエ塾」で16年間、低学年を見てきた感覚では、この時期に大人と同じ自己管理を求めるのは少し早いです。自分の意志だけで楽しいことを途中でやめるより、終わりやすい環境を大人がつくる方がうまくいくことが多い。
守れない子を叱る前に、守りやすい仕組みに変える。今回は、その4つです。
見る順番や、自動再生を止める話は、別の記事にまとめています。
「時間を守りなさい」だけでは、うまくいかない
小1・小2は、時間管理も、行動の切り替えも、まだ練習の途中です。
「30分たったからやめる」には、今何分たったかを意識する、楽しいことを途中で止める、次にやることを思い出す、「もっとやりたい」を抑える、が一度に要ります。
相手はYouTubeやゲームです。次のおすすめが出る。あと少しでクリアになる。大人でも、スマホを「あと5分」と見続けます。
切り替えられないことを、すぐ「約束を守れない」と評価しなくていい。この時期は、自分でコントロールする練習を、環境の力を借りてしていく時期です。
仕組み1|親が止めるのではなく、端末側で終了する

いちばんバトルになるのは、「もう終わり!」「やだ!」「消しなさい!」「あとちょっと!」です。
iPhone・iPadのスクリーンタイム、Androidのペアレンタルコントロール、Nintendo Switchのみまもり設定など、多くの端末に利用時間の管理があります。
ポイントは、親がその場で取り上げるのではなく、決めた時間になったら仕組みとして終わることです。
「17時になったらゲームはおしまい」を、端末側でも17時に使えなくする。毎回親が悪者にならなくて済みます。
最初から素直に受け入れられるわけではありません。ロックされた瞬間に怒ることも、当然あります。それでも、「今日は17時までって決めていたね」と淡々と確認するだけで済むようになります。親が毎回説得しなくてよい仕組みをつくることです。
仕組み2|「あと30分」ではなく、終わりが見えるようにする
低学年に「あと30分ね」と言っても、30分の長さは大人ほどイメージできません。
「17時まで」
「長い針が12になったらおしまい」
「この赤い部分がなくなったら終了」
終わる時間を目で見える形にする。アナログ時計や、残り時間が色で見えるタイマーも有効です。
こどもクリエ塾でも、低学年には「あと10分」と口で何度も言うより、「ここまで来たら終わり」と見せた方が切り替えやすいことがあります。
終了5分前に一度だけ知らせるのもおすすめです。「あと5分だよ。今やっているところを終わらせようね」。突然終わった感覚が減ります。
仕組み3|終わったら、次の行動まで先に決めておく
動画やゲームが終わった瞬間に「はい、宿題!」だと、楽しいことから嫌なことへの急降下です。切り替えたくなくなります。
終えるときは、次に何をするかまで先に決めておく。
「17時になったらゲームを終わりにして、おやつにしよう」
「動画が終わったら、一緒にお風呂に入ろう」
「ゲームを閉じたら、今日学校であったこと教えて」
一度、画面から気持ちを離してから、次へつなげる。
「ゲームのあとは宿題」と決める家庭でも、「ゲーム終了→机へ行く」までをセットにしておくと、毎日ゼロから指示しなくて済みます。「宿題は?」「早くやって!」を繰り返さないための、家庭の順番です。
仕組み4|ルールは、動画を見ていないときに決める
子どもが画面に入っている最中に新しいルールを決めても、うまくいきません。「明日から30分だからね」と言っても、頭は動画でいっぱいです。
決めるなら、親子とも落ち着いている時間。休日の朝など。
「最近、終わるときにいつもケンカになるね。どうしたらお互い気持ちよく終われると思う?」
「何時までにする?」
「タイマーが鳴ったらどうする?」
「終わったタブレットはどこに置く?」
何でも子どもの希望どおりにする必要はありません。親が守ってほしい枠は出し、その中で子どもが選べる部分をつくる。
「ゲームは30分まで。16時半からにする?17時からにする?」
ママに決められたルールから、自分も一緒に決めたルールに変わります。
それでも「あと1回!」と言われたら
仕組みをつくった翌日から完璧になるわけではありません。
長い説教は要りません。「やりたいよね。でも今日は17時までだったね」。気持ちは受け止める。ルールは変えない。この2つを分けます。
ここで一度延長すると、「お願いすれば延びる」を学びます。日によって、怒られて終わる、お願いしたら延びる、機嫌がいいから大丈夫、と変わると、ルールはわかりません。低学年ほど、同じルールを同じように繰り返すことが大切です。
「全部禁止」が目的ではない
悩むと、「もう禁止した方がいいのかな」と思います。これから先、デジタルは生活から切り離せません。使わせないことより、使い方を調整する経験を積むことです。
小1・小2は、その練習を始める時期です。最初は大人が、時間を決める、見えるようにする、自動で終わるようにする、次の行動を決める。少しずつ「今日は自分で止められた」が増えれば、それが自己管理につながっていきます。
見るだけではないデジタルの使い方もある
家庭でYouTubeを見ること自体が悪いわけではありません。放課後の多くが、おすすめ動画を次々に見るだけになるのは、少しもったいない。
HAKOLAB(はこラボ)では、端末を「見るため」だけではなく、調べる、話す、考える、つくる時間にも使います。体験キットで手を動かし、わからないことは聞く。動画のあとに、現実の「やってみたい」へ戻す使い方です。
こどもクリエ塾に通っているご家庭にとっては、教室での区切りと切り替えがすでにその練習です。HAKOLABは、通えないご家庭の放課後に、同じ「終わり」と「次」を置きたいときの選択肢で、教室の代わりではありません。
自宅の放課後に取り入れたい方は、こちらからご覧ください。
HAKOLABをはじめる(https://hakolab.kids/start/)
守れないを叱る前に、守れる仕組みをつくる

自分で時計を見て、時間になったら自分からゲームを終わる。それをいきなり求めるのは簡単ではありません。まず大人が環境を整えます。
端末側で利用時間を設定する
終了時間を目で見えるようにする
終わったあとの行動まで決める
落ち着いているときに親子でルールをつくる
まずは今日、タブレットやゲーム機の設定を一度確認するところからで十分です。我慢する力だけに任せるより、ずっと始めやすいです。
この記事を書いた人
遠藤奈央子
株式会社ビジョンゲート代表取締役。2011年より民間学童「こどもクリエ塾」を運営し、16年間、子どもたちの放課後の学びと成長に携わる。一般社団法人民間学童保育協会代表理事。社会福祉士。
著書に『「自分でできる子」に育つ 放課後時間の過ごし方』(講談社)、『「民間学童」の作り方』(日本実業出版社)。
こどもクリエ塾では、終わりの時間を見えるようにし、次の活動までセットにすることを大切にしています。
HAKOLABでは、自宅の放課後でも「見るだけ」で終わらないデジタルの使い方を届けています。
参考文献・参考情報
- Munzer T, et al. Digital Ecosystems, Children, and Adolescents: Policy Statement. Pediatrics. 2026.
- こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」
- 小1・小2のYouTube・タブレットとの付き合い方(当サイト既存記事)
※端末の制限やタイマーで自己管理が完成する、という単純な話ではありません。本記事では、低学年の切り替えに関する現場の運用と、デジタル環境に関する既存の知見を分けて記載しています。
