「YouTubeばかり見せたくない」
そう思っていても、夕方、家に子どもが一人。
親は仕事をしている。夕食もつくらなければならない。
「ちょっとだけね」とタブレットを渡したら、その間は静かにしてくれる。
その気持ちは、とてもよくわかります。
実際、今の子どもたちにとって動画は特別なものではありません。
こども家庭庁の令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、インターネットを利用する低年齢層の子どもで、動画視聴は93.4%でした。小学生(10歳以上)でも動画視聴は88.8%、ゲームは85.5%と高く、動画はすでに日常の一部です。
だから、YouTubeやタブレットを家庭から完全になくす、という話ではありません。
問題は、「何分見たか」だけでもありません。
今の動画サービスには、次から次へと見続けたくなる仕組みがあります。
特にショート動画、自動再生、無限スクロール、おすすめ動画。
大人でも、気づけば30分、1時間と見てしまうことがあります。
子どもならなおさらです。
今回は、16年間、民間学童「こどもクリエ塾」で試行錯誤してきた経験と、現在の研究をもとに、低学年のYouTube・タブレットとの付き合い方を考えます。
「意志が弱いからやめられない」のではない

動画をなかなかやめない子を見ると、
「約束したのに」
「どうして自分でやめられないの?」
と思ってしまいます。
でも、今のデジタルサービスは、そもそも長く使ってもらうことを前提に設計されているものが少なくありません。
2026年、アメリカ小児科学会(AAP)は、子どもとデジタルメディアに関する政策声明を大きく更新しました。
そこで問題として挙げられているのが、
- 自動再生
- 無限スクロール
- 個人に合わせたおすすめ
- 頻繁な報酬
- 通知
- アルゴリズムによる推薦
といった、利用を長引かせる設計です。
AAPは、こうした仕組みは子どもが自分で「もう終わり」と切り上げることを難しくする可能性があるとしています。
つまり、
子どもの意志の問題だけではない。
サービスそのものが、注意を引き続けるようにつくられています。
よく「脳がハックされている」という言い方をしますが、私はこのくらいの理解が近いと思っています。
意思とは別に、次の刺激へ注意を向け続けさせられる。
これが今の動画環境です。
特に気になるのが「ショート動画」
最近は、YouTube Shorts、TikTok、Instagram Reelsのような短い動画が増えました。低学年がこれら全部を使っている、という話ではありません。数十秒で次へ進む「短い動画の仕組み」が、今の動画環境に広がっている、ということです。
数十秒で終わり、次へ。
また次へ。
一つのことをじっくり考える前に、新しい刺激が入ってきます。
2025年に発表された、短尺動画に関する71研究・約9万8千人をまとめた系統的レビューとメタ分析では、短尺動画の利用が多い人ほど、認知機能の指標が低い傾向があり、特に注意力と抑制コントロールとの関連が大きく報告されました。
ただし、ここは慎重に読む必要があります。
この研究には子どもだけでなく幅広い年齢層が含まれています。
また、
「ショート動画を見ると、必ず注意力が落ちる」
という因果関係を証明したものではありません。
子どものメディア視聴直後の注意・実行機能を調べた2025年のメタ分析でも、映像の速さや刺激性による短期的な影響については結果が一貫していません。
だから、
「ショート動画で脳が壊れる」
とまで言う必要はありません。
ただ、刺激の強い短い動画を次々に見ることが当たり前になる生活は、じっくり読む、考える、作る時間と競合する。
私はそこを気にしています。
本当の問題は、「その時間に何がなくなったか」

スクリーンタイムについては、現在のAAPも「全員に共通する○時間以内」という数字だけで考えることを勧めていません。
動画で何を見ているか。
誰と見ているか。
睡眠、運動、宿題、遊び、読書、家族との時間を圧迫していないか。
量だけでなく、内容と生活全体のバランスを見るという考え方です。
私はこれがとても大切だと思います。
30分YouTubeを見ることより、
その30分が、
外で遊ぶ時間だったのか。
本を読む時間だったのか。
レゴをつくる時間だったのか。
絵を描く時間だったのか。
ぼーっとして何かを思いつく時間だったのか。
を見る。
子どもの放課後には、本来たくさんの選択肢があります。
動画は、その選択肢の一つです。
でも、あまりに強い刺激がいつでも手元にあると、ほかの選択肢を選びにくくなることがあります。
こどもクリエ塾でも、何度もルールを変えてきた
こどもクリエ塾でも、デジタルとの付き合い方は16年間ずっと試行錯誤してきました。
タブレットを学習にも使います。
調べものにも使います。
動画を見ることもあります。
だから、「デジタルは悪い」とは考えていません。
一方で、自由にしておくと、子どもはどうしても刺激の強いコンテンツに引っ張られます。
いろいろ試した結果、現在は、
宿題を除く、その日にやるべき学習を終えてから、娯楽としての動画等は1日30分まで
というルールにしています。
この30分は、
「30分なら科学的に安全だから」
という数字ではありません。
AAPも、学齢期のすべての子どもに共通する絶対的な時間制限があるとはしていません。
こどもクリエ塾では、
子どもたちの放課後に、動画以外の時間をしっかり残すための運用ルール
として30分にしています。
つまり、科学的な「推奨時間」ではなく、「この施設の放課後をどう設計するか」という判断です。
すでに通っているご家庭では、教室のルールと家庭のルールが違っていても構いません。大切なのは、その家庭の放課後に合う終わり方があることです。
では家庭では、どうする?
私は3つでいいと思っています。
1|「何分」より先に、「いつ見るか」を決める
一番避けたいのは、
帰宅する。
とりあえずYouTube。
そこから宿題に戻る。
という流れです。
刺激の強いものから、地味な宿題へ切り替えるのは、子どもにとって簡単ではありません。
だから、
宿題や家庭で決めたことを終える。
そのあと動画を見る。
など、順番を固定する。
毎回親が、
「もうやめなさい」
と言うより、生活のルールにしてしまった方が楽です。
AAPも、宿題中には娯楽メディアを避けることや、家庭内で一貫したルールをつくることを勧めています。
2|「終われない仕組み」を減らす
これは、今の時代ならではです。
自動再生をオフにする。
ショート動画を自由に流し続けない。
「次は何を見る?」をアルゴリズム任せにしすぎない。
見る動画を先に決める。
AAPも2026年の政策声明で、子ども向けサービスでは自動再生や、利用を長引かせる設計を減らすべきだとしています。家庭にも、自動再生をオフにするなどの対応を勧めています。
親と子どもの意志だけで、巨大なアルゴリズムと戦う必要はありません。
設定で止められるものは、先に止める。
これだけでも違います。
3|「やめたあと、何をする?」を用意する
ここが一番大切だと思っています。
YouTubeを消して、
「はい、自分で遊んで」
と言っても、急には切り替わりません。
目の前には、さっきまで刺激の強い映像が流れていました。
だから、
「やめさせる」だけではなく、
そのあとに何を置くか。
本。
工作。
ブロック。
絵。
虫。
お菓子づくり。
外遊び。
カードゲーム。
何でもいい。
大人から見ると、
「そんなこと?」
と思うような遊びでも構いません。
私は、できるだけ子どもらしい遊びを残したいと思っています。
遊ぶ中で、
「これ何?」
「もっとつくりたい」
「どうしてこうなるの?」
が出てきます。
そこから、本を読んだり、調べたり、実験したりすることもあります。
結局、遠回りに見えても、
自分の「好き」を見つけることが、一番長く子どもを動かします。
YouTubeで見つけた「好き」なら、それも入口にすればいい
デジタルを敵にしなくていい理由も、ここにあります。
YouTubeで恐竜を知った。
料理動画を見て、お菓子をつくりたくなった。
工作動画を見て、自分でもつくりたくなった。
それなら、動画を現実の体験につなげる。
「その恐竜、図鑑でも見てみる?」
「これ、本当に作ってみる?」
「材料、家にあるかな?」
見るだけだったものが、
読む。
調べる。
作る。
試す。
に変わります。
こどもクリエ塾でも、タブレットをYouTubeを見るためにしか使っていなかった子が、演劇づくりに夢中になり、A4で10枚ほどの台本を書いたことがありました。
問題は「タブレットを使ったこと」ではありません。
何のために使ったかです。
親が仕事をしているなら、動画に頼る日があっていい
ここも、きれいごとにはしたくありません。
在宅勤務をしながら、小1・小2の子どもと1対1で過ごす。
かなり大変です。
会議中だけ動画を見てもらう。
夕食をつくる30分だけ見てもらう。
そんな日があってもいいと思います。
それを、
「今日も見せてしまった」
と毎回罪悪感にする必要はありません。
むしろ、
いつ使うかを親が決めて、終わりがある状態にする。
そこから始めた方が現実的です。
AAPの2026年の政策声明も、家庭だけに責任を押しつけるのではなく、今のデジタル環境そのものが家族にとって管理しにくく設計されていることを認めています。
動画を減らすことが目的ではない
YouTubeを30分にできた。
タブレットを取り上げられた。
それだけがゴールではありません。
そのあとに、子どもが何をするか。
私はそこを見たいと思っています。
本を読む。
遊ぶ。
つくる。
誰かと話す。
何かに夢中になる。
子どもの放課後は、そういう時間の中で「好き」が見つかります。
そして好きなものが見つかれば、読む、調べる、試すことも増えていきます。
デジタルとの付き合い方を考える目的は、
画面を見ない子にすることではなく、画面以外にも「やりたいこと」がある子にすること。
私は、そのくらいがちょうどいいと思っています。
HAKOLAB(はこラボ)では
HAKOLAB(はこラボ)でも動画やAIを使います。
ただし、画面の中だけで完結させることを目的にはしていません。
動画を見たら、実際に手を動かす。
体験キットで試してみる。
「なんで?」が出たら、AI先生やライブレッスンで聞く。
発見プランの放課後クラブでは、宿題だけでなく、探究や会話の時間も設けています。
デジタルを入口にして、現実の「やってみたい」につなげる。
こどもクリエ塾で大切にしてきた考え方を、通えないご家庭の放課後にも取り入れています。
教室に通っているお子さんにとっては、教室での過ごし方そのものがすでにその実践です。HAKOLABは、その代わりではありません。送迎や距離の都合で、自宅の放課後に同じ考え方を置きたいご家庭のための選択肢です。
HAKOLAB(はこラボ)のサービス詳細はこちら
今日から変えるなら、この3つ
1. 動画を見る「順番」を決める
その日の宿題や家庭で決めたことを終えてから。
2. 自動再生・ショート動画など、「終わりにくい仕組み」を減らす
意志だけに頼らず、設定を使う。
3. 動画を消したあとに、別の選択肢を置く
遊ぶ、読む、つくる、試す。「好き」が見つかる時間を残す。
YouTubeやタブレットをゼロにする必要はありません。
でも、子どもの放課後全部を、画面に渡す必要もありません。
その間を、家庭ごとにつくっていけばいいと思います。
この記事を書いた人
遠藤奈央子
株式会社ビジョンゲート代表取締役。2011年より民間学童「こどもクリエ塾」を運営し、16年間、子どもたちの放課後の学びと成長に携わる。一般社団法人民間学童保育協会代表理事。社会福祉士。
著書に『「自分でできる子」に育つ 放課後時間の過ごし方』(講談社)、『「民間学童」の作り方』(日本実業出版社)。
こどもクリエ塾では、子どもたちとの放課後の中で、デジタルとの付き合い方も含めた生活習慣の工夫を重ねています。
HAKOLAB(はこラボ)では、自宅の放課後でも「やってみたい」をデジタルから現実へつなげる学びをお届けしています。
参考文献・参考情報
- Munzer T, et al. Digital Ecosystems, Children, and Adolescents: Policy Statement. Pediatrics. 2026;157(2):e2025075320.
- Munzer T, et al. Digital Ecosystems, Children, and Adolescents: Technical Report. Pediatrics. 2026;157(2):e2025075321.
- Nguyen L, et al. Feeds, feelings, and focus: A systematic review and meta-analysis examining the cognitive and mental health correlates of short-form video use. Psychological Bulletin, 2025.
- Hinten AE, Scarf D, Imuta K. Meta-Analytic Review of the Short-Term Effects of Media Exposure on Children’s Attention and Executive Functions. Developmental Science, 2025.
- こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書、2026年3月公表。
※短尺動画やデジタルメディアに関する研究には、観察研究や年齢層の異なる研究が含まれています。「ショート動画を見ることで子どもの注意力が必ず低下する」といった単純な因果関係を示すものではありません。本記事では、研究知見と、こどもクリエ塾での16年間の実践経験を分けて記載しています。
